
English Garden
イングリッシュブレックファースト
4月下旬から12日間東京に滞在してゴールデンウィークの真只中にイングランドに戻って来ました。この頃よく利用するミュンヘン乗り換えのフライトだと昼すぎに成田を発ち、同日の夜遅くにロンドンに到着します。とても長い1日にはなりますが、直行便よりもわりと楽に9時間(サマータイム時は8時間)の時差を乗り越えることができるようです。映画も3本ちゃんと観て、機内食も一生懸命食べて、機内ではなるべく寝ないでいようと心がけて、到着した夜はぐっすり寝られるようにするのが肝心です。これはイマジネーションの問題だと思うのですが、僕はあの機内食というのが大好きです。同じものを地上のレストランで出されたら怒って帰ってしまうかもしれませんが、そこは地上1万メートル、外はマイナス70℃、音速の半分のスピードで飛ぶ飛行機の中です、何の文句が言えましょう。今回も雲の上での食事をおおいに楽しみました。
さて到着した翌朝はゆっくり寝坊させてもらって、みんなが学校へと出掛けたあと、キッチンでブレックファーストをつくりました。この頃のお気に入りは、トーストと目玉焼き、それにポリッジという組み合わせです。
ポリッジというのはカラスムギのお粥のことで、作り方はいたって簡単。なるべく底の厚い鍋にお湯を湧かします(一人分が2カップくらい)。ここに一人分大さじ3杯くらいのポリッジオーツを入れます。ポリッジオーツというのは押し麦状になったカラスムギのことで、日本ではオートミールといって売られているものがかなり近いのではないかと思います。そして塩をひとつまみ加え、弱火にして、木のへらでかき混ぜながら15分ほど煮るとどろどろの糊状のお粥になります。これをボウルに取り置き、冷たいミルクを少し加えます。温めたミルクではいけません。イギリス人はどうもこの冷たいミルクにこだわりがあるようで、紅茶に入れるミルクも絶対に温めてはいけないのです。そしてさらに何か甘いものを好みで加えて出来上がりです。僕は黒砂糖を入れるのが気に入っていますが、蜂蜜やメイプルシロップなどをいれてもおいしいです。これはあくまでも僕がスコットランドのハイランド地方の農家で教えてもらった食べ方です。イギリス人、特にスコットランド人にはポリッジの作り方にうるさい人がいるようなので、念のため。
2週間振りのポリッジ、ミルクも黒砂糖も入って、あとはかき混ぜて「いただきま~す!」 ここにもありました、ブレックファーストバーの看板。
それでは、イギリスでの朝食にはポリッジがつき物かというと、まったくそんなことはありません。イギリスは食べ物がまずい、『ならばイングリッシュブレックファーストを1日3回食べるのが一番間違いない』とは、勿論冗談にですが、よくいわれることです。実際にカフェやカジュアルなレストランのメニューには “ALL DAY BREAKFAST” なるものが必ずといってよいくらいあります。これは、朝食のメニューだけど一日中いつでも注文できますよ、というもの。また、ブレックファーストバーなんていう看板もよく見かけます。これは朝から晩までブレックファースト専門のカフェのようなところで、町中はもちろん住宅街の小さな郵便局の隣なんかにポツンとあったりして、哀愁漂うなかなかよい雰囲気の店だったりもします。
この卵の下にあるのがフライドスライスです。 決しておいしいとは思わないのですが、なぜかときどき注文してしまいます。怖いもの見たさのようなものでしょうか。
では“イングリッシュブレックファースト”とは如何なるものか、内容物を羅列してみましょう。卵(普通は目玉焼き)、ベーコン(日本のものよりもかなり分厚くて大きい、そして塩辛い何故かこれは必ず2枚)、ソーセージ(これもかなり太くて、ぐにゃっとしている印象、焼かずに油で揚げてあることが多い)、ベイクドビーンズ(豆をトマトソースで煮込んだもの)、マッシュルームのバター炒め、ハッシュドポテトあるいはフライドポテト、トマト(たいていは半分に切って焼いてある)、ブラックプディング(イメージし難いでしょうが、簡単に云えば、パン粉を豚の血で固めてソーセージにしたようなものを輪切りにして油で揚げたもの)、これにトースト或いはフライドスライス(なんとこれは食パンをまるごと油で揚げたもの!)が付きます。たいていはこの中から好みで4~5品を選んで一つの皿に盛ってもらうわけですが、うっかり“フル”イングリッシュブレックファーストなんていうものを注文するとこれらのほとんどすべてが、皿から溢れんばかりにやってきます。そして、このフルイングリッシュブレックファーストがとても幸せな食事と考えているイギリス人が多いのです。このようなものを頻繁に食べていたらどんなことになってしまうか…すぐに想像できますね。毎日食べたかったら、まず病院の近くに引っ越すことを考えないと…なんて言ってる人もいます。かくいう僕も2週間に一度くらい、これが食べたくなってしまうのです(だいじょうぶですよね、そのくらいなら)。
でも、やはりポリッジがいいです、エブリディブレックファーストには。あのやさしい暖かさ、そして微かに草の匂いを感じるポリッジ。2週間振りにイングランドに戻った朝に食べたポリッジもやっぱり美味しかったです。
この卵の下にあるのがフライドスライスです。 決しておいしいとは思わないのですが、なぜかときどき注文してしまいます。怖いもの見たさのようなものでしょうか。
