
English Garden
ウインターガーデン
とあるフットパスの様子。イングランドでは昼間でも雲が低く立ちこめている。
今この原稿を書いているのは12月17日。日の出は07時56分、日没は15時54分だそうです。 クリスマスの頃には日照時間はますます短くなります。イングランドでは陽が短いだけでなく 一日中厚い雲に覆われているので、陽の光りを感じられるのは10時から 12時頃までです。ランチを食べるともう夕方という雰囲気になってしまうのです。 雨は降るともなく降り続け、地面の乾く間がありません。“降るともなく降る”というのは、 要するにとにかく頻繁に“降ったり止んだり”がくり返されるということです。 そして霧雨でもないのですが、雨粒が小さいためかほとんど傘をさす必要を感じません。 町中でも傘をさしている人はあまり見かけません。歩いていると降ったり止んだりをくり返すので、 さてこれは今降り出したのか、あるいは降っているところに自分が移動して来たのか、 なんてことをふと考えて回りを見回してしまったりします。そんな時たいていは、 濃いグレイの雨雲が上空をかなりのスピードで動いているのを目にします。 こんな天候が11月から2月頃までほぼ毎日続くのです。そんな冬の間にイギリス人と会えば まずは必ず天気の話になります。彼等は思いつくまま、いかにイングランドの冬が暗く冷く絶望的かということ をまくしたてます。でも、みんな知っているのです。冬が終わればまたあの素晴らしい春がやってくる ということを。彼等は冬の冷たい雨のなかでも、肩をつぼめて小走りで、なんてことはありません。 ちゃんと前を向いて悠々と歩いています。そんなイギリス人の姿を見るのがぼくは好きです。 フットパスやフィールドですれ違ったりするときには瞳の奥の方に微かな笑みをたたえながら挨拶を交わしてくれます。
左からラディッチョーというレタスの仲間、パースニップ※、品種改良され食べられる白い部分の多いポロネギ
さて、以前にもお話した「マイケルホールガーデン」の続報です。 この夏はなにかと忙しく、去年の春から週に2回ほど通っていたガーデンにはなかなか行くことができず、 そうこうしているうちになんだか足が遠のいてしまったのですが、 ようやく3週間程前からまた通うようになりました。 約半年振りのガーデンはこんな天候にもかかわらず実に爽快で、あらためてガーデニングの愉しさを再確認しています。
ガーデニングといってもここではいわゆる農作業が主で、 冬の時季このガーデンで収穫しているのは、レタス類、水菜、ほうれんそう、 芽キャベツ、ラディッシュ、パースニップ※、そして露地のメインはリーク(ポロネギ)です。 作業としては春の植付けに向けて、備える、蓄えるといった作業になります。 この時季に植え付けるものはほとんどないので、収穫してしまって空いた畑をどんどん掘り返していきます。 winter digging (ウインターディギング)といわれる作業です。フォークで土を掘り返し、雑草の根っこなどをとりのぞいていきます。
そして一番大切な作業とされているのがコンポスト(堆肥作り)です。 ここのヘッドガーデナーはドイツ人ですが、“half of gardening is compost(ガーデニングの半分は堆肥作りだ)”というのが口癖です。 夏から置いてよく熟した牛糞と腐植土を1.5メートル程の高さまで順番に積み上げてゆくのですが、 僕のような素人がやると台形になってしまって、面積当たりの容積の効率が悪い、 と叱られてしまいます。うまい人がやると、見事にほとんど垂直に積み上がっていくのです。 このあたりにいろいろ工夫しだすとこれがなかかな面白く、 実は僕はこの作業がかなり好きです。このコンポストにはたくさんのミミズがいて、 それを目当てにロビン(Robin)という小鳥がしきりにやってきます。 英国の国鳥に指定されている鳥で、辞書を見るとヨーロッパコマドリとなっています。 人懐っこい仕草をする鳥で、一緒に仕事をしているつもりでいるかのように つかず離れずエサをついばんでいます。こんな小鳥までがそれなりに イングランドの暗くて冷たい冬を愉しんでいるようで、なんだか嬉しくなってしまいます。
※セリ科の野菜で和名は「アメリカボウフウ」。形がにんじんに似た根をスープやシチューに使う。
