
English Garden
みどりの指
この数日前には豆の畑に堆肥を入れる重労働をして手の皮が・・・
イングランドに引っ越してきて3年になります。 庭のある家には住んでいないのであまり偉そうなことは云えませんが、それでも自分なりにおおいにガーデニングを楽しんでいます。
この国ではガーデニングといってもかなり広い意味をもっていて、 窓辺に植木鉢を置いても胸を張ってガーデニングといえるし、 何エーカーもある野菜などの生産もおなじくガーデニングという言葉が使われます。 そういえば、小さな家庭菜園などはキッチンガーデンなんていわれていて、 ぼくはこの言葉がとても気にいっています。ようするにファーマーというと動物を飼っている畜産・酪農家のことで、 野菜を生産する農家のひとはガーデナーと呼ばれます。だから、窓辺に花を飾るおばあちゃんも、 庭の手入れに余念のないおじさんも、収穫や出荷で大忙しのおにいさんもみーんな同じくガーデナーなのです。
言葉の話が長くなりますが、園芸に秀でた人を指して「『みどりのゆび』を持つ人」といいます。 英語でも “GREENFINGERS”ということばがあり、きっとこれは英語をそのまま日本語に訳して『みどりのゆび』となったのではないでしょうか。 というわけで写真に写っているよごれた手は僕自身の『みどりのゆび』です。 去年の5月から10月までの半年間、週に2日午前中だけですが『マイケルホール』 というガーデンにボランティアで働きに行っていた頃、 トマトの収穫を終えて家にもどると指先に茎のみどりがこびり着いてほんとうに『みどりのゆび』になっていました。 何だか嬉しくなって手を洗ってしまう前にわざわざ三脚とセルフタイマーを使ってこの写真を撮りました。 こんな写真もぼくにとってはガーデニングの楽しい想い出になっています。
ところでこの『マイケルホールガーデン』、この場合のガーデンとは、 17世紀に建てられたマナーハウスに付属し、当時は12人もの専属ガーデナーがいたと伝わるフォーマルガーデンで、 今も往年の面影を色濃く残すレンガの高い壁に囲まれた、非常に美しいウォールドガーデンです。 ただし今は二人の専属ガーデナーと数人のボランティアによって、 化学的な肥料や薬などはまったく使わずに人の手と知恵に頼って一年を通じて約50種類の野菜を生産しています。 ここには小さなショップがあって、隣接する学校に送り迎えに来る父兄や近所の人たちが野菜を買いに立ち寄ります。 小さな村の学校を核としたコミュニティのための大きなキッチンガーデンといえるでしょう。
こちらはお城の庭のガーデナー。 このおじさんが使っている機械がもうほとんどアンティークもので、 通りかかるとつい立ち止まって柵越しにながめてしまいます。彼はときどきこちらに手を振ってくれたりもします。
カントリーサイドのマーケットなどでは美しく使い込まれたとても質のよさそうなガーデンツールをよく見かけます。 産業がまだよいモノを造るということを使命としていた時代の道具たち。
今年はまだこのマイケルホールガーデンには通いはじめていないのですが、 この頃は近所のガーデンでなかなか楽しい時間をすごしています。 午前中に時間の余裕がある日などは、子供を学校へ送り届けたあとに 『サウスオーバーグランジ』というガーデンに寄り道したりします。 もともとこのガーデンは1570年頃に建てられた個人の邸宅で、 1940年頃から一般に解放されるようになったそうです。当時の建物もそのままきれいに残っていて、 今は保育園やタイルの工房などに使われています。 そして毎朝9時30分からはキッチンの大きな窓がいっぱいに開かれて、 とても安い料金でモーニングティーを楽しむことができます。入園料なんてものはないにもかかわらず、 ここのガーデンは実によく手が入っていて、いつ行ってもどこかで必ずガーデナーが仕事をしているので、 何気なく彼らの近くのベンチまでティーのトレイを運んで、まさにプロのグリーンフィンガーを ちらちら眺めながらモーニングティーをいただくという具合です。そんな何人かいるガーデナーのなかに、 まだ若いけれどもとても誠実そうな青年がいます。彼はいつもどこかで芝を刈ったり ローラーをかけたりしていて、どうやら芝生を専門に面倒みているようなのですが、 そんな彼の仕事振りを見ていると、こうして毎日毎日手間を惜しまず 400年余の時間が経つと、こういうすばらしいガーデンになるのだなということを しみじみと感じてしまうのです。そんな思いでこの美しいガーデンを眺めながら50ペンス、約90円のモーニングティーを楽しませてもらっています。
